呼吸する掛軸

この掛軸の作品は、画仙紙にアクリル絵の具で描いたものです。

軽い気持ちで始めた掛軸作りでしたが、
京都の藪田夏秋先生の教室で、本物の掛軸に触れさせていただいたことで、
私の掛軸に対する考え方は大きく変わりました。

掛軸はもともと中国から伝わったそうですが、
日本の気候風土の中で、
文化や生活と共に時間をかけて作られてきた芸術作品であります。

そして日本の四季の中で湿度の高いときは空気中の水分を吸って、
また低いときは空気中に水分を吐き出しながら、
常に呼吸をして伸縮しているものでもあるのです。

そのため裏に使われているような和紙一つとっても、
長年職人さんが拘りぬいてきた素晴らしい物で、
知れば知るほど伝統の素晴しさを改めて感じさせられます。

無知であるがゆえに掛け軸の装飾性と収納性にひかれて、
「よしっ! ポップで新しい表現を掛軸に取り入れるぞ!!」なんて、
鼻息荒く息巻いたものの(笑)
呼吸をしないアクリル絵の具を使っては、掛軸に負担をかけてしまいます。

残念ながら、この表現は諦めざるを得ませんでした。

しかし掛軸を通して、日本の伝統文化と歴史の素晴しさを改めて垣間見て、
自分の我を通すような表現ではなくて、
もっと無理せずこだわりを捨て、自然の流れを受け入れて描くことが出来るのではないか?

そのような考えを持つことができて、
これから制作していくうえでの転機になったように思ったのでした。


猫と木天蓼

画家永島あさの作品を紹介しています。 現在は主に墨の表現を追求しています。 よろしくお願いいたします。

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